【解説】auAMレバレッジ・オールカントリー(レバカン)完全解説|仕組み・リスク・コスト・最適戦略まで徹底分析
auアセットマネジメントが新たに設定した「auAMレバレッジ・オールカントリー(レバカン)」は、MSCIオールカントリー指数の日次で2倍の値動きを目指すレバレッジ型ファンドです。
通常のオルカンでは物足りない、もっと効率的に世界株の成長を取り込みたい投資家から注目されています。
しかし、レバレッジ型ファンドは通常のインデックス投信とはまったく異なる特徴・リスクを持っています。本記事では、表面的な説明では触れられない中身の仕組み・リスクの本質・長期運用での歪み・実践的な使い方まで徹底的に解説します。
1. レバカンの基本仕様
まずは公式で公表されている基本情報をまとめます。
- 対象指数:MSCIオールカントリー・ワールド・インデックス(ACWI)
- 運用目標:日々の値動きが概ね2倍になるよう調整
- 通貨:円建て(為替ヘッジなし)
- 商品分類:レバレッジ型(ブル型)
- コスト:信託報酬は年0.3%台(ただし隠れコストあり)
ポイントは「日次で2倍」という点です。
長期で2倍ではなく、毎日リセットして2倍を維持しようとします。
2. レバカンはどうやって2倍を実現しているのか
レバカンは現物株を2倍買っているわけではありません。実際には、次のような金融工学的手法を使ってレバレッジを実現しています。
- 株価指数先物(ACWI先物)
- トータルリターンスワップ(TRS)
- 構造化債(デリバティブ内包の債券)
これらに共通しているのは、少ない元手で大きなポジションを持てる仕組みということです。
これにより、保有資産の2倍の値動きを合成できます。
● レバレッジの仕組み(イメージ)
1万円の現金に対して、デリバティブを使って2万円ぶんのACWIの値動きを持つ。
ACWIが+5%なら +10% を目指し、ACWIが −5% なら −10% を目指すという仕組みです。
3. 日次リセットがもたらす「長期の歪み」
レバカン最大の特徴であり最大の落とし穴が、日次でレバレッジ比率を調整するという仕組みです。
これはどんな影響を及ぼすのでしょうか?
● 結論:長期では指数の2倍にならない
理由は次の3つです。
- ボラティリティ・ドラッグ(乱高下で損が積み上がる)
- 毎日のレバレッジ調整でコストが発生する
- デリバティブの金利・スプレッドなどの隠れコスト
● 具体例で理解する:乱高下すると損する理由
指数が +5% → −5% と動くと、
- 指数はわずかに −0.25%
- レバレッジ2倍は −1%
つまり、普通のインデックスより「乱高下に弱い」構造になっています。
4. レバカンのコストは「信託報酬だけ」ではない
レバカンの信託報酬はおおよそ0.3%台ですが、これは見えているコストの一部にすぎません。
レバレッジ型ファンドには以下の隠れコストが存在します。
- デリバティブのスプレッド(売値買値の差)
- 先物のロールコスト(期日が来たら乗り換える費用)
- スワップの金利コスト
- 発行体の信用スプレッド(仕組債の相手のリスク)
- 為替リスク(ヘッジなしのため為替差損益が直接反映)
これらは開示されないため、実際のパフォーマンスに影響しているのか投資家からは見えづらい点です。
5. レバカンが強い相場・弱い相場
● 強い相場(レバカン向き)
- 安定した上昇相場(低ボラティリティ)
- 緩やかに右肩上がりを続ける局面
- 暴落後の回復フェーズ(V字反発)
こうした相場では、レバカンは複利効果も働き指数を大きく上回る成績になり得ます。
● 弱い相場(レバカン不向き)
- 乱高下が激しい相場
- 横ばいが続く相場
- 急落 → 回復 → 再急落を繰り返す相場
これらの相場では、日次リセットとボラティリティ・ドラッグのせいで指数を下回る可能性が高いです。
6. 長期でレバカンを持つ場合の注意点
● ① 大暴落のダメージは2倍以上に感じる
ACWIが −30% になれば、レバカンは −60% に近づく可能性があり、心理的負担は非常に大きくなります。
● ② 暴落からの回復は指数より遅れる
下落して資産が減った状態でレバレッジをかけても、元の金額に戻るまでの道のりは長くなります。
● ③ 長期で指数の2倍にはならない
日次リセットの宿命で、複利の構造が指数と異なるためです。
● ④ コストが積み重なる
レバレッジ型は年間の「実質的コスト」が想像以上に大きくなりがちです。
7. レバカンに投資するべき人・しないべき人
● 投資に向いている人
- リスク許容度が高い人
- 世界株は長期で上がると強く信じている人
- 暴落でも投げ売りしない人
- 資産の一部でチャレンジしたい人
● 投資に向かない人
- 値動きに不安を感じやすい人
- 老後資産を守りたい人
- 資産の大部分を一つの商品に集中したくない人
- 乱高下が続くと不安になる人
8. レバカンのおすすめ活用法
● ① コア・サテライト戦略
メイン資産(70〜90%)はオルカンやS&P500などの低コスト商品。
サテライト(10〜30%)にレバカンを入れるのが王道です。
● ② 暴落後のスポット買い
レバレッジは「底値に近いときに買うほど効果が高い」ため、暴落後の反発局面が最大のチャンスです。
● ③ 積立は慎重に(相場次第)
上昇トレンドでは積立が強い味方になりますが、乱高下が続く相場では積立が逆効果になることもあるため注意が必要です。
9. レバカンに関するよくある誤解
● 誤解①「長期で指数の2倍になる」
→ なりません。日次リセットとドラッグの影響で必ず乖離します。
● 誤解②「レバレッジ=危険すぎる」
→ 危険なのは事実ですが、正しく使えば資産形成を加速できる武器にもなります。
● 誤解③「レバナスと同じジャンル」
→ レバナスはNASDAQ100で米国大型ハイテク特化。
レバカンは世界3000銘柄以上に分散しているため、性質が大きく異なります。
まとめ:レバカンは“強力だが扱いが難しい”投資ツール
auAMレバレッジ・オールカントリーは、世界株の成長を2倍で取りに行く非常に強力な商品です。
しかしその裏では、日次リセット・デリバティブコスト・ボラティリティ・ドラッグといったレバレッジ特有のリスクを強く受けます。
「世界株が長期で成長する」という大前提を信じ、暴落や乱高下にも耐えられる投資家にとっては、資産形成を加速させる有力な選択肢になります。
一方で、レバレッジの仕組みを理解しないまま購入すると、大きな損失や精神的ストレスを抱える可能性もあります。
レバカンは、知識と覚悟を持った投資家が使うべき“攻めの道具”と言えるでしょう。
