30代会社員のなおつんです。
このブログでは30代会社員の悩みを同じ会社員へ向け共有し、今日よりも明日へ一歩前進できるような記事を書いています。
私は製造業の営業系の部署で働いており、日々現場から挙がってくる顧客からの製品クレームを分析・集計し商品を企画開発している部門に顧客の声を届けるという仕事もしています。
今回はそんな顧客からのクレームをどのように社内で情報展開し製品改善に繋げていくかを分かりやすく解説します。
「クレーム」と聞くと電話対応や接客の方法かと思われる方もいるかも知れませんが、今回はあくまでも製品を製造している本社がこれらのクレームをどのように扱っているかというポイントを押さえた上で読んでください。
製造業で働いている方もこれから働きたいと思っている方も非常に参考になる考え方ですのでこの記事でぜひ勉強していってください。
「製品クレーム」の定義
製品のクレームとひとことに言っても、実は大きく2つの種類に分類する事ができます。
2、製品自体は正常だが顧客の期待に満足出来ていない ⇒製品仕様のクレーム
この2つについて詳しく説明していきます。
1、製造起因のクレーム
製品起因のクレームは比較的シンプルですが「商品を買って、いざ使ってみたら動かなかった。」や「大きな傷が付いていた。」というようなものです。
これらは本来あってはならない事なので当然お客様はクレームを言ってきます。
販売現場の対処方法としてはお客様へは丁重にお詫びをし、新品と交換するか代金を返金して対応します。
このケースにおいて多くはメーカーである製造側の責任として、製造段階のどこに不良があったのかを徹底的に調査して工場の製造ラインや作業工程を改善・対策を実施します。
また、すでに市場に流出してしまった同じ型の製品が今後どのくらい同様の不具合が何件くらい発生するかを試算して必要に応じて回収を実施します。(ときどき「改修」とも言ったりします。)
回収の一番分かりやすい例ですと「リコール」ですね。
リコール制度は製品を使用するお客様がケガをしたり重大な事故を起こす可能性がある場合、それらの事故を未然に防ぐためにメーカーが各省庁に届け出をして回収をする制度の事です。
時々テレビやインターネット上で自動車や電化製品のリコールの発表をして「回収」を呼びかけるのを見る事がありますね。
また、ケガや事故など安全性に発展しないケースでもメーカーが回収を行うことが稀にあります。
さらに、工場の製造工程での不具合により発生した不良品がたった1個だけという事が立証された場合は回収を実施しない場合もあります。
なぜなら、この場合は工場で生産したたくさんの製品の中で市場に流出した不良品はたった1個だけしかないからです。

買ったばかりなのにすぐに壊れた。

製造起因のクレームと分類しています。
2、製品仕様のクレーム
製品仕様のクレームについて例を挙げると「製品を使っている時の音がうるさい。」や「普通に使っているのに○○が錆びやすい。」といったタイプのクレームです。
これは先ほどの製造起因のクレームと違って、製品自体は正常なのですが顧客の要求(期待)を満足していないというケースです。
どちらかというとこちらのクレームの方が対応が難しく社内では非常によく揉める案件です。
なぜなら前提としては工場の工程不良も無く最高の品質の物を作り、製品そのものには全く不良が無いためです。
当然、この製品を企画し開発する段階でもあらゆる顧客のニーズや使い方を調査したり、販売前にも実験テストして最終的に世に送り出しているわけですから、通常は「ちょっと変わったお客様からのクレーム」という事で処理してしまおうという社内の空気になるときがあります。
たった1件のクレームのために製品を改良するのは莫大な開発コストと時間も掛かるわけです。
それらのコストは最終的に製品の販売価格に反映されるので、多くのお客様にとってもデメリットでしかありません。
製造業はボランティアではないので、お客様のクレームを全て受け入れてその度に製品を改良して利益を出せるほど甘くは無いのです。
お客様の声を届ける部署である私達もこの1件のクレームにどう付き合っていくかは永遠の課題だと思っています。
こういう場合に私達が使う手段としては積極的にお客様の所へ出向き同じような事を訴えているお客様がいないかを聞き取り調査します。
例えば同じ製品を10,000個販売して今回のようなクレームを訴えているお客様が500人見つかったとすればどうでしょうか。
割合にすれば5%ものお客様が同じような不満を持っているとすれば、このクレームは「たった1件のクレーム」ではなくなります。
先ほど説明したように商品企画の段階で十分な市場調査をしているため、後から同じクレームが5%も発見されるケースは非常に稀ですが。汗
ただ、このような数字で表される定量的なデータによって「製品に改善の余地があるかも?」と社内でも議論のテーブルにようやく上げる事で出来き、ここでようやく技術的な検証やコストの試算などが行われるのです。
ここで私たちの仕事の難しいところが、5%のクレームが絶対的に有効では無いという事です。
先ほどのような安全性に繋がる恐れのある案件はたとえ1%のクレーム率であったとしても製品の改善に踏み切る場合もあるし、たった1件のクレームの場合でも十分ありえる事です。
その理由は顧客保護の観点、風評被害の拡大やその時代の流れ、開発コストなどの程度具合によってクレームごとに大きく異なるため、多角的な視点からの判断が必要になります。
社内ではこれらを総合的に議論し最終的には役員や責任者によって判断が下されます。

思っていたより音がうるさいなぁ。

仕様問題のクレームと分類しています。
黒に近いグレーな案件
これまで話したことは製造側であるメーカーに責任がある性善説に基づいたケースでの話でした。
全てのクレームが上記に当てはまれば良いのですが、現状私たちのような製造業ではどちらにも当てはまらないグレーなケースというのも多く存在します。
例えば以前このような事がありました。
お客様から「○○がいつもより早く消耗してしまう。製品の不良では?」というクレームがありました。
この案件のとある部品は金属で出来ており、ある一定期間使用すると次第に摩耗していき限界に達すると交換が必要になる類の部品です。
その不具合のあった部品現品を取り寄せて調査したところ、その不具合現品自体は多少の摩耗があったにせよ想定された正常の範囲だったため当初は「製品仕様のクレーム」として扱うべきだと私も考えていました。
しかし、後になってそのお客様に詳しい話を聞いてみると製品を購入してから合計の使用時間が非常に短いにも関わらずここまで部品が摩耗していたため、早期摩耗という異常である事が分かりました。
そうなってくると不具合現品の加工不良(製造起因)が疑われるため、更に詳細に原因を究明すべく専門の調査機関に不具合現品を調査してもらう事にしました。
その結果は「不具合現品の加工および材質など一切の不良は認められず。」との結果でした。
この調査結果から製造起因の問題の可能性は消えたので製品仕様の問題という事になります。
私の頭を非常に悩ませたこの案件の結論はいったいどうなったのでしょうか。

ずいぶんと摩耗が早い。

お客様の使われ方によって異常摩耗する場合があり、一概に「クレーム」とは言えない場合もあります。
お客様が悪い!?
このケースの最終結論を先に言うと「お客様の使い方が異常であった。」という事です。
開発チームも思いつかないような異常な扱われ方をこのお客様はしていたのです。
それによって営業関連部門である私達が社内から「お客様に製品を販売する時にきちんと取扱い方法の説明をしていない。」という指摘を受ける事になったのです。
このお客様には再度丁寧に説明しご納得いただきました。
今回は専門の調査機関を使ってまで不具合現品を調査し遠回りしましたが、製造業ではこういうどんでん返しのやり取りも社内で行われているのです。
そのため、営業関連の顧客に近い立場の部署の人はお客様の使用状況や視点などを常に正確に把握してクレーム情報を取り扱わなくてはいけないのです。

お客様の使用環境や実態状況を正確に把握して判断しましょう。
まとめ
今回は顧客のクレームについて以下のように分類を分けて解説しました。
2、製品仕様のクレーム
3、どちらでもないケース
ここまで読んでいただいた方は、3のどちらでもないケースも見方によっては「顧客の要望」として捉える事が出来ることに気付いたでしょうか。
よく書店で見かけるクレーム関連の書籍に書かれている「クレームは宝の山だ!」とか「クレームはありがたい!」というような表現の裏には今回説明したような事が裏にあるのです。
しかし、先ほどにも言ったように製造業はボランティアではありませんので、すべての顧客の要望に応えるのは開発コスト的にも現実的ではありません。
お客様の全ての要求に応えて会社が倒産してしまっては、良い製品を世に送り出せなくなり元も子もないためです。
この開発コストを含めた小売価格とお客様の期待値とのバランスを厳密に考慮してモノづくりという仕事が成り立っているのです。
この記事で製造業の事を少しでも理解していただければ幸いです。
今後とも皆さんの役に立つ情報をこのブログで配信していきますのでまた来てください。