30代会社員のなおつんです。
このブログでは30代会社員の悩みを同じ会社員へ向け共有し、今日よりも明日へ一歩前進できるような記事を書いています。
今回は刑事ドラマなどでよく聞かれる「時効」について解説します。
時効は私たちが普段生活する中でも非常に密接に関わってくる部分ですので、知っておくと得する事があるかも知れません。
時効には2種類ある
一般的に時効というと、犯罪など悪い事をした時に逮捕されずに長い時間が経てばその罪が無効になるというイメージがありますが、時効には借金などお金に関連する事や不動産にも深く関係しています。
時効には2種類あり、物や権利を一定期間において自分が占有していると自分の物になる「取得時効」と、同じように時間が経つと物の所有権などが無くなる「消滅時効」です。
ちなみに時効が成立する事を法律の用語で「時効の完成」または「時効完成」といいます。
この2つについて詳しく解説していきます。
取得時効
取得時効というのは不動産などを一定期間自分の物として使用(占有)していると、最終的に本当に自分の物として認めてもらえるという制度です。
取得時効には占有者(使用している人)の思いによって時効の期間が違うので、2つのケースについて解説します。
1、Aさんのケース「このアパートは私の物だ。」
Aさんは本当は他人の所有するアパートを自分の物だと信じていて自分で住んだり、他人に賃貸している場合です。
このアパートの本当の所有者は別の人ですが、Aさんはそのことを知らないという状態であり、この事を法律用語では「善意無過失」といいます。
この場合、Aさんはこのアパートを占有(使用)した時から10年間経過すると時効が成立してAさんの物になります。
2、Bさんのケース(本当は他人の物だと知っているけど…)「このアパートは私の物だ。」
一方で本当は他人の所有物だと知っているBさんが自分の物だと主張している場合は、占有開始から20年経過するとBさんの物になります。
Bさんの事を法律用語では「悪意(事情を知っている)」といいます。
先ほどのAさんの10年と比べて、Bさんの場合は取得時効まで20年と長い期間ですが、その期間を過ぎれば他人の物でも自分の物にする事が出来ます。
自分が部屋を借りている場合は取得時効にならない
部屋を借りて家賃を毎月大家さんに払って住んでいる人も多いと思いますが、もし他人の家を賃貸で借りて20年経過した場合は取得時効にはなりません。
賃貸の場合は毎月家賃を払っている時点でそもそも自分の物だと主張する意思は無いと思われているからです。
自分の物だと思い込んで占有している事が取得時効の条件になります。
他人に貸していても売却しても占有を継続している
先ほどのAさんBさんどちらの場合でも、アパートを自分の物だと主張して他人に空き部屋を貸している場合はどうでしょうか。
アパートを自分の物だと信じ切っている善意無過失のAさんが、途中で自分で住むのを止めて部屋を他人に貸して実質的に自分では使用していない場合でもAさんが占有している事になるため、トータルで10年経過すれば時効は成立します。(上記の図)
もしAさんが途中で他人にアパートを売却した場合、次のオーナーは事情を知っているかどうかに関係なくAさんの占有期間を継続して時効を成立させる事が出来ます。(下の図)
この場合Aさんが占有していた7年間とアパートを購入した人の合計10年間経過すれば時効が成立します。
消滅時効
消滅時効とは一定期間の時間が経つと権利(お金の貸し借りなど)が消滅して、はじめから何も無かった事になるという制度です。
お金の貸し借りに関しては貸した方を「債権者」といい、借りた方を「債務者」といいますが、債務者はお金を借りたまま一定期間放置すると返さなくても良くなります。(実際は簡単に借金が消えるなんて、そこまでうまくいきませんが。)
お金を貸している側(債権者)は時効が成立するとお金を返してもらえなくなるので大変な事です。
消滅時効の期間は基本的に10年間ですが、条件付きの場合はその事を知った時から5年間とされており、そのどちらかの早い方と定められています。
「行使できる事を知った日」というのはある条件付きの債務に関して使われる場合があり以下のような例があります。
権利を行使できる日から5年間は消滅時効期限がありますが、権利を行使できる日が最長で10年までなので、途中で「知った」としても10年経過で消滅時効が成立します。
ワンポイント知識「時効の遡及効(そきゅうこう)」
取得時効も消滅時効もどちらの時効が成立した場合でも、時効の効果はその起算日に遡って有効です。
要するに借金が消滅時効によってチャラになった場合、借金そのものも消滅しますが、それまでに発生した利息も無くなります。
不動産を取得時効によって取得した場合は、占有開始日(自分の物だと主張した日)からもともとその人の物だった事として扱われます。
仮に不法占拠していた場合でもこの事実は無くなり、損害賠償なども出来なくなります。
時効の期間は更新される?
時効には一定期間経たないと成立しないという解説をしましたが、「時効の更新」によって期間をゼロに戻すことが出来ます。
せっかく何年も経ってまもなく時効が成立するとなった時でもある条件が揃えば、時効の期間がゼロに戻って、またはじめからカウントする事になります。
時効が更新されると債権者によっては有利になり、債務者にとっては不利になります。
以下の場合は時効が更新されます。
1、支払い猶予を求めた場合
借金の場合、お金を借りている人(債務者)が貸している人(債権者)に対して返済を猶予して欲しいとお願いをした場合、債務者は「借金をしている」という自覚があるため、この時点で時効は更新されます。
2、債務の一部を弁済した場合
もうひとつのケースとして「債務の一部を弁済した時」は同じく「借金をしている」という事を本人が自覚しているので、時効が更新され期間はゼロに戻ります。
もし悪い借金取りに追われている場合「少しだけでも払って」とお願いされ、少しの金額でも払ってしまったら時効は更新されてしまうので注意しましょう。
それ以外の時効の期間の延長
ここでは詳しく解説しませんが、「時効の更新」以外にも時効の期間が延長される場合があります。
例えば裁判によって訴えられた場合などは、裁判そのものが長引く事も多いので6カ月間の期間が延長されたり、債権者が債務者に内容証明郵便などによって借金の返済を求めた場合も時効の成立する期間が6ヵ月延長されます。
時効の効果は「援用」する事で発揮
時効の期間が過ぎてお金を借りた人が「借金がチャラになった!」と喜ぶのはまだ早いです。
借金をした人、つまり債務者は「援用」をしなければ時効は効果を発揮しません。
債権者、つまりお金を借りた人は「時効が完成したのでもう借金は返しません。」と主張する「援用」をするか、「時効は完成したけど放棄してちゃんとお金を返します。」の「放棄」のどちらかを選択する事が出来ます。
援用を行えば晴れて借金はチャラになりますし、放棄をすれば時効の効力を無くして借金はそのままです。
債務者はあえて放棄を選ぶ人はほとんどいないと思いますが、注意が必要なのは前項で解説した「一部弁済」や「猶予の請求」をした場合は援用する事が出来ません。
さいごに
今回は「取得時効」と「消滅時効」を解説しました。
他人の物でも自分の物だと言い続ければ本当に自分の物になってしまう怖い制度ですが、本当の持ち主が数十年もほったらかしにしてしておくという事は「もういらない」と法律は認めてくれるようです。
使い方はいろいろありそうですが、時効には「更新」などの落とし穴もあるので注意が必要です。

今日の結論:時効は他人の物を正当に自分の物に出来るから怖い!
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