そんな疑問に答える考え方が、世界中の投資家に支持されている『4%ルール』です。
FIRE(経済的自立・早期リタイア)を目指す人たちの間では常識ともいえるルールですが、実は老後の資金管理や新NISAでの投資にも応用できる重要な考え方なのです。
4%ルールとは?
4%ルールとは、「年間支出の25倍の資産を用意すれば、一生お金が尽きない」という資産運用の目安です。
このルールは、アメリカのトリニティ大学による研究「Trinity Study(トリニティ研究)」に基づいており、年4%ずつ資産を取り崩しても30年以上資金が枯渇しないという実証データから導かれました。
■ 具体例で考えてみよう
たとえば、老後に年間300万円の生活費が必要だとします。
その25倍=7,500万円の資産があれば、4%ずつ(=年間300万円)を取り崩しても理論上は資産が尽きない、という考え方です。
なぜ4%なのか?──背景にある研究
1990年代に発表された「トリニティ研究」では、株式と債券をバランスよく保有したポートフォリオで検証が行われました。
過去の市場データを分析した結果、年率4%以内で取り崩せば、30年間資産が残る確率が非常に高いことが判明したのです。
- 株式:60%
- 債券:40%
- 年平均リターン:約6〜7%
- インフレ率を考慮しても、4%以内の取り崩しなら持続可能
つまり「資産を運用しながら取り崩す」という発想が、資産を減らさずに生活する理想的なモデルだといえます。
4%ルールを日本の投資環境で実践するには?
1. 新NISAを活用して非課税運用
新NISA(2024年開始)は、年間360万円・生涯1,800万円まで非課税で投資できる制度です。
これを活用して、全世界株インデックスファンド(オルカン)などに長期投資を行えば、安定的に年3〜5%のリターンを狙うことも可能です。
インデックス投資は4%ルールとの相性が抜群です。
関連記事:迷ったらオルカンで本当に正しい?
2. 取り崩しのペースを柔軟に調整
日本はアメリカよりも低金利・低成長の環境にあります。
そのため、4%よりもやや低めの3〜3.5%ルールを採用するのが現実的です。
特に退職後の初期は支出を抑え、資産の寿命を延ばす工夫が大切です。
3. 分散投資と為替リスク管理
全世界株式や米国株式を中心に投資する場合、為替の変動にも注意が必要です。
為替ヘッジなしの投信を選ぶと円安時に有利ですが、円高時に評価損が出ることもあります。
資産の一部を日本円資産(債券・現金)に分けておくと安心です。
4%ルールの弱点と注意点
4%ルールはあくまで「過去のデータに基づく理論」であり、未来を保証するものではありません。
特に次のようなリスクに注意が必要です。
- 市場の暴落リスク:取り崩し初期に株価下落が重なると、資産減少が加速する
- インフレリスク:物価上昇で実質的な購買力が下がる
- 長寿リスク:想定より長く生きることで資金が不足する可能性
- 税制変更リスク:制度改正による影響(例:NISA・iDeCoなど)
したがって、毎年の資産状況に応じて取り崩し率を見直すことが重要です。
4%はあくまで「目安」であり、マーケットの状況に柔軟に対応する姿勢が必要です。
シミュレーション:4%ルールで暮らす老後資産モデル
ケース | 年間支出 | 必要資産(4%ルール) | 毎月の取り崩し額 |
---|---|---|---|
単身・賃貸暮らし | 200万円 | 5,000万円 | 約16.6万円 |
夫婦・持ち家 | 300万円 | 7,500万円 | 約25万円 |
夫婦・ゆとりある生活 | 400万円 | 1億円 | 約33万円 |
このように、生活水準に応じた資産目安を把握することで、老後の不安を可視化できます。
4%ルールとFIREの関係
FIRE(Financial Independence, Retire Early)は、「経済的自立によって早期リタイアを実現する」生き方です。
その指標として世界中で使われているのがこの4%ルール。
毎年の支出が300万円なら、7,500万円の資産を築けばFIRE可能という計算になります。
つまり、FIREを目指す人にとって4%ルールは「ゴールを数値化するツール」なのです。
まとめ:4%ルールは“安心して生きるための指針”
4%ルールは、単なる数字の理論ではなく、「お金の不安から解放される生き方の指針」です。
すぐにFIREを目指さなくても、今からNISAやiDeCoで積み立てを始めれば、将来の資産寿命を大きく伸ばすことができます。
焦らず、堅実に、そして自分のライフスタイルに合った運用を続けていきましょう。
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