30代会社員のなおつんです。
今回は個人型確定拠出年金 iDeCo(イデコ)について個人投資家の私がメリットとデメリット、それから商品選びのポイントを解説します。
イデコの運営管理機関連絡協議会が発表しているデータによると、イデコの加入者数は年々増加しており、2019年3月末時点では120万人を超えています。
「老後2000万円問題」や「終身雇用崩壊」などがニュースで話題になってからは個人の意識が変わってきている結果が表れているといえます。
個人型確定拠出年金 iDeCo(イデコ)とは
個人型確定拠出年金 iDeCo(以下 イデコ)は「Individual Defined Contribution Plan」の頭文字を取ったもので、直訳すると「個人の確定した拠出の計画」です。
個人が毎月決まった額を出資して運用することで、老後のための資金の準備を促すという制度です。
イデコを理解する前に、年金の全体像を把握しておく必要があるので、次で分かりやすい図を使って解説していきます。
日本の年金制度の概要
上記の図は会社員の場合の年金の全体図を表したものですが、「3階建て」と呼ばれる日本の年金制度の1階と2階の部分が「国民年金」と「厚生年金」であり、この2つは国が制度を設計し運営・管理を行っています。
その一方で3階の部分は、企業や個人で運用・管理する年金制度となっており、主に「企業年金」「個人型(イデコ)」「企業型」の3つの種類があります。
上の図のオレンジの部分が今回解説する個人型確定拠出年金として運用するイデコという制度です。
イデコは国民年金や厚生年金とは違い、金融機関などで任意で加入し運用する事が出来ます。
会社員の場合はイデコとよく似た制度である「企業型確定拠出年金」を採用している会社もあり、この制度については別の記事でも解説してあるので参考にしてください。
イデコを使って「投資」をする
イデコとは制度の名前ですが、イデコの加入者はこの制度を使って金融資産を自分で購入し運用することになります。
「投資」「運用」という言葉を聞くと拒否反応を起こしてイデコに手が出しにくいという方は多いみたいですが、購入できる商品には元本保証型の「預金」や「保険商品」も選べるので、必ずしもリスクがある金融資産だけということではありません。
① 定期預金・保険商品
② 債券の投資信託
③ 株式の投資信託
④ REIT(不動産)の投資信託
イデコで購入できる金融資産のリスクとリターンはほぼ比例関係にあり、その関係性は以下の図で表せることが出来ます。
長期的により大きいリターン(運用収益)を狙いたい方は、投資信託を選択して積極的に運用する事も出来ますが、この場合は元本は保証されないため損失を出してしてしまう事もあるので注意が必要です。
その一方で「定期預金」や「保険商品」などは元本が保証されていて安心ですが、その分のリターンも小さく将来大きく資産が増える事は望めません。
投資信託と定期預金の間を取ったのが「債券」ですが、債券も元本保証はされてはいないながらも、比較的安全性が高い資産だと言われており、少ないリスクでコツコツ運用するには最適だといわれています。
これらの金融資産を自分で組み合わせして長期間運用するのがこの制度の特徴です。
どの金融商品を選ぶのが良いのかについては後ほど解説しています。
個人型確定拠出年金(イデコ)のメリットと特徴
イデコの最大の特徴は「節税効果が高い事」で、以下のようなメリットがあります。
・運用益が非課税
・受け取り時に税金控除
・自己破産しても差し押さえできない守られた資産
これらのメリットについて詳しく解説していきます。
掛け金が「所得控除」として計算できる
日本の所得税は、所得の大きさに応じて税金が高くなる「累進課税方式」が採用されています。
所得が多い人は支払う税金も多くなり、所得が低い人は少なくなるというシンプルな仕組みです。
上の図は会社員の場合の年収と課税所得、控除などの全体像を表した図です。
このようにイデコで拠出する掛け金は「所得控除」として計算されるので、イデコの掛け金が多ければ課税所得が少なくなり、支払う所得税や住民税を結果的に安く抑える事が出来ます。
例えば年収400万円の人が毎月10,000円をイデコに積み立てして運用した場合、1年間で約18,000円の節税となり、これを30年間継続すると合計で540,000円の節税になります。

引用:楽天証券 節税シミュレーション
掛け金を多くすればその分だけ節税効果もより高まるので、この制度を活用すればかなり大きなメリットになります。
楽天証券の節税シミュレーションのリンクを以下に貼っておきます。
運用益が非課税
イデコでは毎月の掛け金を「定期預金」や「投資信託」などの金融商品を購入し、自分で運用する事になりますが、運用によって得られた利益は全額非課税になります。
通常、証券口座で投資信託などの金融資産を購入して得られた分配金や売買利益には20.315%の税金が掛かります。
イデコのメリットはこれらの利益が全て非課税となるので、長期的に効率良く運用する事が出来ます。
受け取り時に税金控除
現在のイデコの制度では、運用したお金を原則60歳から受け取り可能となっていますが、受け取り時には「退職金控除」や「公的年金控除」などの税制優遇が受けられるようになっています。
上記は勤続年数や受取額によって変わるため、ここでは詳しく解説はしませんが、結果的に税金が安くなる事がメリットとして挙げられます。
自己破産しても差し押さえできない守られた資産
イデコで運用した資産は万が一自分が自己破産した場合でも「確定拠出年金法」で守られるようになっています。
もし、多額の借金によって財産を差し押さえられた場合でも、イデコの資産は差し押さえる事が出来ないため、強力に守られている資産をいえます。

唯一、税金の未払いや滞納がある時だけはイデコの資産
を差し押さえできるようです。
個人型確定拠出年金(イデコ)のデメリット
イデコのデメリットについても解説します。
・投資信託は元本保証されない
・掛け金は上限がある
・受け取り時には税金が掛かる
・毎月加入者手数料が掛かる
・手続きが少し面倒(会社員の場合)
・「特別法人税」の存在
原則60歳まで引き出せない
イデコは節税効果が高いメリットがある一方で、積み立てて運用した資産は原則60歳まで引き出しが出来ません。
もし途中で毎月の掛け金の額を変更したければ途中で変更は可能ですが、今までイデコに拠出したお金は原則60歳まで引き出すことは出来ません。
イデコを始めようと考えている人は、生活に無理のない範囲で掛け金を決めて運用する必要があります。
投資信託は元本保証されない
投資信託などの金融商品によっては「元本保証がない」ので、自分が拠出したお金よりも受け取る金額が少なくなる可能性があります。
イデコで購入できる商品の中には「アクティブ・ファンド」と呼ばれる長期的な運用に向いていない商品も含まれているので、ある程度は購入する商品の見極めが必要になってきます。
とはいえ正しく商品を選択し、金融庁も推奨している「長期・分散・積立」を徹底して行うことでリスクを低減しながら長期的に資産が増える事も期待できます。
掛け金は上限がある
イデコに拠出する掛け金には上限が決められており、所属する企業や働き方によって変わります。
以下の図はイデコの公式ホームページの抜粋ですので、自分がどれに当てはまるのかを参考にしてください。

出典:iDeCo公式サイト ※DC:確定拠出年金 DB:確定給付企業年金、厚生年金
注意点としては、勤めている企業で「企業確定拠出型年金」の制度があり、かつ、「マッチング拠出制度」がある場合は、そもそもイデコ口座の開設が出来ない場合があることです。
この場合は勤めている会社や所属している組織に確認する必要があります。

「マッチング拠出」とは、確定拠出型年金の掛け金を会社と従業員で出し合う制度のことです。
受け取り時に税金が掛かる
税制面では非常に優れているイデコですが、受け取り時には税金が掛かります。
受け取るときには「一時金」として全額一括で受け取るパターンと、「年金」として毎月少しづつ受け取る場合で税金の金額は変わってきます。
また、会社の勤続年数やイデコの運用年数によっても受けられる税金の控除額が変わってきます。
すこし話は逸れますが、日本は超高齢化社に突入していく中で退職する年齢もさらに高齢化しており、これによって定年退職する年齢が60歳から65歳に引き上げられたり、雇用延長して70歳まで働く人も増えています。
日本の年金制度に関しては、今後も法改正などによって大きく変わる事が予想されており、それによって対象となるイデコや年金に関する税金の制度も変わるかも知れません。
現在ではイデコの受け取り時には税制優遇があるという話だけにしますが、将来は国民にとって良い方向に変わるか悪い方向に変わるかは想像ができない点がイデコのデメリットとしてあります。
毎月加入者手数料が掛かる
また、イデコの加入者には掛け金を出すごと(毎月ごと)に105円の手数料が掛かります。
さらにイデコ口座を開設した金融機関によっては「運営管理手数料」という費用が数百円程度掛かる場合もあるので、金額は小さいとはいえ長期間の運用においてこの手数料に関して知っておく必要があります。
手続きが少し面倒(会社員の場合)
これは会社員と公務員の場合のみですが、イデコ口座を開設しようとする場合は、所属している会社や組織から証明書を提出してもらわないといけません。
証券会社から郵送される書類を持って総務部へ行き、この証明書の記入をしてもらう必要があるため、会社員にとってはこれが少しだけ手間になるかと思います。
「特別法人税」の存在
イデコのデメリットを語る上で欠かせないのが、1962年から現在まで長期間に渡り凍結されている「特別法人税」という税金制度の存在です。
この税金が将来再び実施された場合、イデコの口座の資産に年1.173%の税金が発生する事になっています。
この税金は長年「凍結」となっているだけなので、復活する可能性はあるにせよ、多くの意見では凍結は解除されないであろうという見解が多く見受けられます。
もし凍結が解かれた場合、かなり大きいデメリットととなります。
イデコはもともと60歳まで資金を引き出せない制度なので、対応策としては積立を止めて運用だけを行う方法がありますが、特別法人税は資産に対して毎年課税するので、運用が上手くいかない場合は資産が毎年目減りするという事も十分に考えられます。
「特別法人税」の存在は、これといって対応策が無いため今すぐに何かを心配する事ではないですが、頭の隅に置いておく程度でいいと思います。
イデコは実際儲かるの?
「イデコって実際に儲かるんですか?」と気になる方も多いと思いますので、私の運用実績を公開したいところですが、残念ながら私の会社は企業型DCのマッチング拠出を行っているため、現在はイデコの開設は出来ません。
その代わりといっては何ですが、イデコとほぼ同様の制度である企業型DCの私の実績を公開したいと思います。
企業型DCとイデコは制度の名前は違いますが、年金の制度の自体はほとんど変わらないのである程度は参考になると思います。
2021年76月末の時点の私の運用成績は以下のようになっており、今のところそれなりの利益が出ています。
企業型確定拠出年金の運用実績⇩
上の折れ線グラフの「取得価額累計」というオレンジの線が実際に私が拠出した金額で、「資産評価額」という緑の線が現在の資産残高です。
私は毎月約27,000円を拠出しており、現在の資産残高は1,690,548円となっています。
実際に今まで拠出した金額の合計は1,260,261円なので、その差額430,287円が運用によって得られた利益です。
新型コロナウイルスの「コロナショック」よって一時的に損失が出ている時期もありましたが、現在ではプラスに転じています。
私の他の資産運用の実績については下の記事でも公開しているので参考にしてください。
イデコの商品選びのポイント
イデコを運用するにあたってどんな商品を選べば良いか、商品選びのポイントを解説します。
ちなみに今回解説する商品選びの前提となるのは、

ある程度リスクを取って、長期的に高い運用成績を狙いたい。
という方向けの解説になるので、「投資は怖くてできない」「絶対に損はしたくない」という人は、元本が保証されている「定期預金」や「保険商品」の選択をおすすめしていますのでその点はご理解ください。
イデコで投資信託を選ぶべきは、以下の3つに該当するものです。
・ノーロードの商品(購入手数料0円)
・信託報酬(手数料)0.1~0.2%の商品
以上の3点を満たす商品であれば長期的にある程度の運用益が期待できると思います。
ちなみにイデコ口座を開設するのであれば、手数料なども考慮するとネット証券がおすすめです。
全世界株式に投資するインデックスファンド
金融庁が2019年に発表し大きな話題と呼んだ「老後2,000万円問題」のレポートには「長期・分散・積立」というキーワードが何回も出てきました。
これは個人が投資をする上での基本的な考え方を金融庁が示したものであり、これを忠実に行えば高い運用益を出せる可能性が高くなる事を伝えています。
イデコで商品を選ぶ際には、全世界の株式に投資している「株価指数」に連動するインデックスファンドを選択する事がベストといわれています。

「株価指数」というのは、日本でいうところの「日経平均株価」や「TOPIX」にあたるもので、聞いた事ある人は多いと思います。
全世界株式の株価指数で有名なのは「MSCIコクサイ・インデックス」や「FTSE全世界株価指数」などです。
投資信託の商品概要にこれらの言葉が出てきたら、それが全世界株式に投資している商品となります。
逆に長期運用で選んではいけないとされているのが「アクティブファンド」と呼ばれている商品です。
アクティブファンドは短期的に見れば高い収益を出している商品もありますが、長期的に見ればほとんどの商品がインデックスファンドの運用成績に勝てなかったという研究データがあります。
ノーロードの商品
「ノーロード」を直訳すると「負荷が無い」という意味ですが、投資信託を購入する際には「購入時手数料」と「売却時手数料」が掛からない商品を選ぶ事をお勧めします。
購入時にお金が掛かる投資信託は今でも結構見られますが、長期的な視点で見るとこの手数料が運用益に与える結果の差は非常に大きくなります。
現在の投資信託業界ではこのノーロードの投資信託が多くなってきており、イデコ口座でも購入が可能です。
信託報酬(手数料)0.1~0.2%の商品
購入時と売却時に発生する手数料以外でイデコ運用時に発生する費用が「信託報酬」です。
投資信託はまとまったお金をファンドマネージャーが運用する仕組みですが、信託報酬はファンドマネージャーなどに支払う手数料の事を指しています。
この手数料も長い目で見れば運用成績に大きな影響を与えますが、商品によっては1~3%とかなり高めの手数料を設定している商品もあります。
最近のインデックスファンドでは信託報酬が0.1~0.2%と低コストの商品も増えてきているので、これらの商品を選ぶのが賢い選択です。
信託報酬は高くとも0.5%以下の商品を選ぶようにしましょう。
さいごに
お金に関する知識の事を「金融リテラシー」といいますが、先進国の中でも特に日本人は金融リテラシーが低い国民だといわれています。
その理由についてはいろいろと説がありますが、私個人的な考えでは学校で金融教育がされていない事が大きいと思います。
これが意図的なものかは分かりませんが、お金の事を学校で学んだ記憶はほとんどありません。
私の同僚で幼いころからアメリカで育って今は日本に住んでいる人がいますが、その同僚いわく、アメリカでは授業の一環としてデモ口座に架空の100ドルを入金し、株のトレードをして一週間で誰が一番お金を稼げたかを競うゲームもやっているとの事でした。
日本人はこういうプロセスを通してお金について学ぶ機会が少ないのかもしれませんが、その一方では老後の貧困化などが懸念されており、早い段階から資産運用して準備しておかないといけない現実があります。
そのためイデコやNISAといった制度が出来る事は大変ありがたいのですが、それでも多くの人は資産運用で何をしたら良いのか分からないという人も多いのではないでしょうか。
こういった税制優遇と制度設計と同時に、多くの人に知ってもらう機会を同時に与えてもらう事を今後も期待したいと思います。
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ぜひ興味があれば別の記事を読んでいただきお役に立てればと思います。