日本人の給料が上がらない理由が判明!実質賃金8カ月連続マイナスの衝撃
2025年8月、日本の実質賃金(物価変動を考慮した賃金)は前年同月比で **−1.4%** と8カ月連続のマイナスを記録しました。名目賃金は伸びを見せているものの、物価上昇がそれを上回ってしまい、実際の購買力が低下する状況が続いています。
企業の「賃上げ」は進んでいるのか、なぜ給料が実質で追いつかないのか、そして投資家としてどう対処すればよいかを分析します。
実質賃金とは?名目賃金との違い
「名目賃金」は給与として支払われる額のこと。「実質賃金」はそれを物価で割り戻して、貨幣価値変動を考慮した実質的な購買力を表します。
物価上昇が賃金上昇を上回ると、実質賃金はマイナスになります。
日本では、春闘で基本給などを引き上げる動きがあっても、物価高のペースに追いつかないケースが多く見られます。
なぜ実質賃金が長期でマイナス?主な要因
- 物価上昇(インフレ)が激しい
食品・光熱費・原材料価格などの上昇が企業コストを押し上げ、価格転嫁の結果、消費者価格も上昇。名目賃金の伸びを超えてしまう。 - ボーナスなど特別給与の変動
決算期・支給時期の変化により、特別支給分が大幅に減少すると名目賃金の伸びが鈍る影響が出やすい。 - 中小企業・地方企業に賃上げ波及せず
大企業で賃上げがあっても、中小零細企業では資金余裕が小さく、賃上げが追いつかないという構造的な分断。 - 労働生産性・労働分配率の伸び悩み
生産性向上なくして賃金引き上げ余力が制限される。日本全体で労働分配率が低下傾向という指摘も。 - 消費者心理・景況感の重み
企業が物価転嫁を警戒し、抑制的な賃金政策を取るケース。また、コスト高圧力が先行して先行投資・賃上げを抑える動きも。
最近の統計データから見える動き
2025年8月の実質賃金は前年同月比 −1.4%と、3カ月ぶりの下落加速。{index=7}
名目賃金自体は+1.5%程度のプラスではあるものの、特別支給(ボーナス等)の落ち込みが大きく、全体を押し下げている格好です。
また、毎月勤労統計でも所定内給与(基本給+残業代)は着実に上昇しているとの報告もありますが、物価変動対応には追いついていません。
実質賃金マイナスの投資家への影響
実質賃金の低迷は、個人消費の伸び悩みにつながり、国内企業の売上減に波及するリスクがあります。特に小売・サービス業は打撃を受けやすいでしょう。また、賃金が追いつかないことで投資余力が縮小し、資産形成の面でも逆風となります。
一方で、円安局面や輸出企業への追い風が期待されるため、輸出型・グローバル企業や海外収益比率の高い企業は相対的に有利な立場になる可能性があります。
投資家が取るべき戦略
- 輸出/グローバル企業への注目
為替追い風や海外市場の成長を取り込める企業をポートフォリオに入れる。 - インフレ耐性資産を組み入れる
不動産、インフレ連動債、REITなど、物価上昇に強い資産クラスを分散的に保有。 - 配当重視・キャッシュフロー強化型銘柄
収益性が安定しており、配当が期待できる企業を選ぶ。 - コスト管理型ファンド・インデックス投資
コストを抑えつつ長期運用を続ける仕組みが有効。
今後の見通しと注意点
実質賃金が回復するためには、物価上昇率の鈍化と名目賃金のさらなる上昇が不可欠です。物価上昇が落ち着けば、賃金上昇が追いついてプラス転換の可能性も出てきます。
ただし、世界的な原材料価格の変動やエネルギーショック、新興国のインフレ圧力など、予想外の逆風には注意が必要です。
まとめ
実質賃金が8カ月連続でマイナスとなった背景には、物価上昇の勢い、ボーナス変動、賃金波及の遅れ、企業収益構造の限界など複数の要因があります。
投資家としては、景気や賃金動向を注視しつつ、逆風局面も耐えうるポートフォリオ設計が求められます。
給料が名目で上がっても“実感”できない状況は、資産運用への関心を一層高めるきっかけともなり得ます。
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