2023年3月、アメリカのシリコンバレー銀行(Silicon Valley Bank:SVB)が経営破綻し、世界の金融市場に大きな衝撃を与えました。
スタートアップ支援の象徴とも言われたSVBの破綻は、なぜ起こったのか。そしてその影響はどこまで広がったのか。
この記事では、SVB破綻の背景や投資家への影響、そして今後の教訓について詳しく解説します。
シリコンバレー銀行とはどんな銀行?
シリコンバレー銀行は、アメリカ・カリフォルニア州に本拠を置く商業銀行で、主にスタートアップ企業やベンチャーキャピタルに対する融資や金融サービスを提供してきました。
テクノロジー企業の資金調達や預金を支え、「スタートアップの銀行」とも呼ばれる存在で、米国のVC業界では非常に影響力の大きい銀行でした。
しかしそのSVBが、2023年3月、史上2番目の規模といわれる銀行破綻に至ったのです。
SVB破綻の背景と原因
急激な金利上昇
SVBの破綻の最大の要因は、2022年から続いた米FRBの急激な利上げです。
同銀行は預金を安全資産である米国債などで運用していましたが、金利上昇で債券価格が急落。巨額の含み損が発生しました。
預金流出の加速
スタートアップ企業は金利上昇や投資家の慎重姿勢で資金繰りが厳しくなり、預金を次々と引き出し始めました。
SVBは資金繰りのため債券を売却しましたが、そこでも損失が確定し、投資家や預金者の不安が急速に広がりました。
銀行取り付け騒ぎ
結果的に「取り付け騒ぎ」が発生。わずか2日間で約420億ドルもの預金が引き出され、SVBは資金繰りに行き詰まり、連邦預金保険公社(FDIC)の管理下に置かれる事態となりました。
SVB破綻の影響はどこまで広がったのか
スタートアップ業界への打撃
SVBはスタートアップ向け融資や預金サービスの大きな柱でした。そのため多くの企業が運転資金を失い、従業員への給与支払いすら危うい状況に陥ったケースもありました。
ただ、米政府やFDICが迅速に全預金保護を表明したことで、パニックは一定程度収束しました。
世界の金融市場への波紋
米国銀行業界全体への信用不安が広がり、株式市場は大きく揺れました。
一部ではリーマンショックを連想させる声もありましたが、今回の破綻は主にSVB特有の構造的問題に起因しており、金融危機へと発展する規模ではありませんでした。
投資家が学ぶべき教訓
金利変動リスクを甘く見ない
SVBの破綻は、金利上昇が金融機関の資産運用にどれほど深刻な影響を与えるかを示す象徴的な出来事でした。
債券で運用している投資信託や銀行株への投資でも、金利動向には常に注意が必要です。
分散投資の重要性
預金者の中には、資産のほとんどをSVBに預けていたスタートアップもありました。ひとつの金融機関への過度な集中は大きなリスクです。
個人投資家も資産分散を徹底し、リスクを分散することが改めて重要だといえます。
情報収集のスピードと冷静さ
SNSの発達により、情報が瞬時に拡散する時代です。今回も取り付け騒ぎがSNSを通じて加速しました。
投資家は情報を鵜呑みにせず、信頼できるソースを見極め、冷静に判断する力が求められます。
まとめ|SVB破綻が示した投資の現実
SVBの破綻は、銀行という「堅い」イメージの業界ですら、環境の変化次第で経営が行き詰まることを如実に示しました。
個人投資家にとっても、金融機関を含む投資対象へのリスクを再認識する出来事だったといえるでしょう。
これからも金利動向や市場の流れを注視しながら、資産分散とリスク管理を徹底することが重要です。
投資は自己責任。大きなリターンを追うだけでなく、守りの姿勢も忘れずに投資を続けていきましょう。